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改正省エネルギー法 1999
1999年4月1日から、改正省エネルギー法(正式名称「エネルギーの使用の合理化に関する法律」:資源エネルギー庁)が施行されました。
改正以前の「省エネルギー法」は、第1次、第2次の石油危機等を背景に、省エネルギーへの社会的ニーズが高まったことを受けて1979年に成立したものですが、この改正法は、近年地球規模での環境問題への取り組みが大きな課題となっている中で、1997年12月に開催された「地球温暖化防止京都会議」で制定された温室効果ガス削減(1990年比6%減)を着実に実施するため、1998年6月5日に改正されたものです。
【今回の法律改正の主なポイント】
@エネルギー使用量の多い工場に対し、計画的な省エネ投資の義務化
A対象となる工場・事業場の範囲が拡大
B家電製品や自動車の省エネ基準の大幅引き上げ
の3点です。以下、主なポイントの概要と導入後の対策や影響について紹介します。
2.計画的な省エネ投資の促進と対象施設の拡大
(1)第一種エネルギー管理指定工場
今回の改正により、エネルギー多消費工場である従来のエネルギー管理指定工場(製造業、鉱業、電気供給業、ガス供給業、熱供給業の5種類の工場のうち、エネルギー消費量が原油換算3,000kl/年度以上、電力1,200万kwh/年度以上)は、「第一種エネルギー管理指定工場」として、エネルギー使用の合理化に計画的に取り組むための3〜5年間の将来計画を作成、提出することが義務付けられました。
(2)第二種エネルギー管理指定工場(新規創設)
さらにエネルギー管理指定工場の対象施設が拡大し、「第二種エネルギー管理指定工場」の指定が新規創設されました。これは、原油換算1,500kl/年度以上、電力600万kwh/年度以上のエネルギー消費を行う全業種の中規模工場・事業場を対象としたもので、工場以外にオフィス、デパート、ホテル等も新たに含まれることになりました。この第二種エネルギー管理指定工場に対しては、a)合理化を行う旨の努力義務、b)エネルギー管理員の選任(第二種工場に指定後6か月以内)と届出(次年度5月末まで)、c)省エネルギー講習の受講、d)エネルギー使用状況の記録等が義務付けられることになりました。
3.トップランナー方式導入により、省エネ基準の引き上げ
(1)対象 旧省エネ法ではガソリン乗用自動車、エアコン、照明器具(蛍光灯)、テレビ、複写機、電子計算機、磁気ディスク装置、ガソリン貨物自動車、VTRの9機器が省エネ基準対象機器として指定されていましたが、改正後はこれに電気冷蔵庫、ディーゼル乗用自動車、ディーゼル貨物自動車等が加えられました。
(2)省エネルギー基準【トップランナー方式】の設定方法と目的
旧省エネ法では基準対象の製品について、平均的なエネルギー消費効率を若干上回る水準に目標値(省エネルギー基準)を設定していましたが、改正後は現在商品化されている製品(特殊品等は除外)のうち、エネルギー消費効率が最も優れている機器の性能以上の水準が目標値となります。(これをトップランナー方式と呼びます)
このトップランナー方式により打ち出された高い目標値を設定することによって、その機器全体の省エネルギー性能を大幅に向上させることを目指すものです。
(3)省エネルギー基準達成の義務づけ
省エネルギー基準を下回る商品を販売した場合は、その製造事業者等に対し、省エネルギー基準の目標を示して当該性能の向上を図るよう勧告が行われ、従わない場合には企業名が公表されるとともに、命令、罰金(最高100万円)が科せられます。
4.省エネ社会の構築をめざして
施行後の対策について、主要業界からは、省エネ対策を実施するための計画が出されました。これによれば、2010年における産業部門のエネルギー消費量は10%減を目標とし、この計画通りにエネルギー消費量が削減されれば、CO2排出量は1990年比7%減という試算も出されています。
本法の施行により、コストの上乗せによる製品価格の上昇や、省エネ基準に対応できない製品、企業が出てくる等の大きな影響も予想されます。しかし、環境問題、温暖化問題への取り組みは、今や地球規模での課題であり避けては通れない問題です。我が国の企業の優れた技術開発力を活かして、省エネルギーを着実に達成していくことが必要でしょう。
また、省エネルギーは企業だけでなく、我々国民一人一人にとっても大きな課題です。日常生活においても省エネ・省資源への意識改革や取り組み(例:冷暖房の適温設定、電気製品のこまめなスイッチオフ、自家用自動車利用の自粛等)が求められており、国全体で一丸となって省エネルギー対策を積極的に推進することが大切です。
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